乳腺のMucocele-likelesionはRosenにより報告された小唾液腺のMucoceleに類似した組織像をもつ比較的まれな良性疾患であるが, その良悪性の診断は細胞学的にも組織学的にも難しいことが多いとされている. 今回, われわれは27歳の女性に発症した本症を経験したので, その細胞学的特徴につき検討し報告した. その結果, 本症と粘液癌との鑑別を細胞学的に行うことは比較的困難であり, 組織学的にもきわめて早期の粘液癌と鑑別することが重要と思われた. 粘液癌では異型性が弱く, 背景の粘液の存在がその診断の助けになるとの報告が大部分であるが, 本症の存在も念頭において慎重な細胞の読みをする必要があるものと思われる. 臨床的には癌の好発年齢より若い閉経前の女性に多く発生するといわれており, 実際の診療においてはこれが参考になるかもしれない.