日本臨床細胞学会雑誌
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膵島細胞癌の転移との鑑別に細胞診が有用であった副腎褐色細胞腫の1例
近藤 安子坂本 允弘飯田 修平
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1992 年 31 巻 6 号 p. 1013-1018

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抄録

既往歴より膵島細胞癌の転移が最も疑われた副腎腫瘍において迅速捺印細胞診を組織診と併用することにより, 褐色細胞腫の診断が容易であつた多臓器腫瘍の1症例を報告する. 症例は32歳男性, 1983年10月 (25歳時) 膵頭部癌の臨床診断のもとに膵頭部十二指腸切除術を施行された. 摘出材料の病理組織診断は膵島細胞癌であつた. 術後7年経過良好であつたが, 腹部超音波検査 (US), Computed Tomography (CT) にて, 左副腎, 両側腎, 肝に腫瘤が認められ転移が最も疑われた. 術中左副腎腫瘍迅速組織切片より捺印標本を作成し組織診と併用した. 細胞所見では出血炎症性背景のなかに集合性孤立性に腫瘍細胞がみられ, 核の大小不同, クロマチンの増量が著明であつた. なかに大きな核内封入体を有する細胞が存在し, これらの細胞像より褐色細胞腫の診断が容易となつた. 摘出材料において左副腎の褐色細胞腫, 膵島細胞癌の肝転移, 両側の腎細胞癌が病理組織学的に確認された. 電顕では褐色細胞腫と膵島細胞癌に分泌顆粒が認められた. 免疫組織化学的には褐色細胞腫において支持細胞にS-100蛋白が大型の腫瘍細胞にはNSE, クロモグラニンが陽性であつた. なお本症例は膵島細胞癌と褐色細胞腫の存在よりMEN Type I & IIの重複例でありしかも腎細胞癌の合併したまれな症例である.

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