1992 年 31 巻 6 号 p. 992-997
一般に術前診断が困難である肺硬化性血管腫に対し, 経皮的肺針生検細胞診が診断上きわめて有用であった1例を報告した.
症例は75歳女性.胸部異常陰影を指摘されたため経皮的肺針生検細胞診を施行し, 次のような細胞所見を得た.
(1) 一層ないし多層のリボン状配列を示す類円形細胞の乳頭状集塊あるいは散在性存在.これらの細胞は抗ヒト肺surfactant apoprotein単クローン抗体陽性.
(2) 小型の核で明るい細胞質を有する未分化な細胞群.
(3) 硬化性部分や乳頭状部分の茎部に存在する紡錘形細胞群.
(4) ヘモジデリン貧食組織球の存在.
(5) 血性背景.
以上のような特徴的細胞像より, 術前に肺硬化性血管腫と診断した.著者らの既報告例と合わせ, 確定診断のために経皮的肺針生検細胞診は有用であり, 積極的に施行すべきであると考えられた.