日本臨床細胞学会雑誌
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転移性皮下腫瘍に対する穿刺吸引細胞診の適用
各務 新二渡辺 昌俊白石 泰三矢谷 隆一
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1993 年 32 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

臨床的に皮下腫瘤として認められ, 穿刺吸引細胞診が施行され, 手術あるいは剖検, その他臨床的検索により原発巣の明瞭な転移性皮下腫瘍18例につき, 細胞診の成績, 組織型診断および原発巣推定の可能性につき細胞学的検討を行い, 以下のような結果を得た.
1) 穿刺吸引細胞診の転移性皮下腫瘍18例 (部位別内訳: 皮下への転移12例, 骨転移巣から皮下組織への侵襲6例) に対する成績は, 陽性16例 (88.9%), 疑陽性2例 (11.1%), 陰性はなかった.
2) 細胞診陽性16例の細胞型の内訳は, 腺癌9例 (56.25%), 肝細胞癌2例 (12.5%), 大細胞癌, 小細胞癌, 移行上皮癌, 腎癌, 腎芽腫, 各1例 (6.25%) であり, 手術または剖検から得られた原発巣組織型と対応した一致率は16例中15例 (94%) と高率であった.
3) 細胞診から原発巣推定の可能性については, 16例中6例 (37.5%) が可能であった.内訳は大腸の高分化腺癌, 肺の小細胞癌, 甲状腺の乳頭腺癌, 腎の明細胞癌などであった. 一方, 原発巣を特定できなかったものは10例 (62.5%) で, 乳腺, 肺, 大腸, 胃などの腺癌が主であり, 原発巣の組織診標本など臨床情報と対比, 照合することで推定可能となった.
以上, 本法は皮下腫瘍における癌転移の有無の第一次的鑑別法として有用であり, 組織型診断, 原発巣推定にも役立つことが示された.

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