日本臨床細胞学会雑誌
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原発性唾液腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診
組織診との不一致例の検討
松田 実曽根 啓子
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1993 年 32 巻 1 号 p. 38-45

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抄録

われわれの施設では, 1987~1991年の5年間に原発性唾液腺腫瘍に対して穿刺吸引細胞診が行われ, 組織診の判明している症例は19例であった.良性腫瘍の正診率は71.4%, 悪性腫瘍の正診率は60%であったが, 完全に組織診と一致した症例はわずか26.3%であった.今回われわれは, 両者の不一致例14例についてその原因を検討した.多形腺腫では上皮細胞か間質由来の細胞かいずれかの細胞しか認められなかった場合, 単に良性病変とのみ診断される傾向にあった.False positiveのおもな理由は, 核の大小不同や形の不正が認められたことによるが, 背景に粘液基質を認めたことから良性とすべきであった.ワルチン腫瘍を正診できなかったのは, oncocytic cellを腺細胞と誤ったものであり, リンパ球の多い背景, 蜂の巣状の細胞配列, 豊富な細胞質に注意すべきであった.粘表皮癌のfalse negative 2例には, 扁平上皮型, 中間細胞型および粘液産生型のすべての腫瘍細胞が出現していなかった.クロマチンの軽度増量, 濃染した核小体などに注意すべきであったが, 悪性の判定には困難に感じる.本腫瘍19例中7例は, 触診にて頸部リンパ節腫脹と診断されていて判定を迷わせた.

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