1993 年 32 巻 6 号 p. 1132-1137
サイトメガロウイルス (HCMV) の成人での顕性感染 (CMV感染症) はまれであるが, 臓器移植, 特に骨髄移植の際の免疫抑制状態では, CMVによる間質性肺炎が高い死亡率をもたらす.Ganciclovir (GANC) 投与で予後が改善されてきたが, 予防的長期投与は骨髄抑制の点より好ましくない.したがってGANC投与にはCMV感染症の迅速診断が不可欠となるため, CMVDNAをPCRで検出しCMV感染症を確定診断する試みを行った.検体として, 末梢血・骨髄液・尿沈渣・唾液・気管洗浄液細胞のDNAを用い, PCRにはCMVのV領域のプライマーを使用し, 検体採取から約4時間での診断を可能とした.このPCRの結果はウイルス培養等の結果ともよく一致した.CMV感染症の有無を骨髄移植後のスクリーニングとして行い, 陽性例にただちにGANCを投与し, 骨髄移植後のCMV感染症による死亡を0とすることができた.