日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺穿刺吸引細胞診における組織診との良・悪判定不一致の要因と疑診 (Class III) 判定の要因
深沢 政勝菅間 博小杉 岳三郎植野 映田中 秀行相吉 悠治
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1993 年 32 巻 6 号 p. 867-875

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抄録

乳腺穿刺吸引細胞診を施行後, 組織学的診断が確定した652例 (良性373例, 悪性279例) について, 組織診との判定が不一致で誤診といえる症例は, 良性4例 (1.1%), 悪性21例 (7.5%) にみられ, 疑診 (Class III) 判定例は, 良性21例 (5.6%), 悪性26例 (9.3%) にみられた.これらの症例について, 組織診と判定が不一致となった要因および疑診 (Class III) 判定となった要因を検討した.
良性乳腺疾患における判定不一致 (Class IV, V) 例の4例中3例は, 細胞異型が高度のため判定が不一致となり, 1例は細胞所見を過大評価したのが原因であった.疑診 (Class III) 判定例21例のうち1例は標本不適によるもので, 12例が過大評価, 8例が高度異型によるものであった.
悪性乳腺疾患では, 判定不一致 (ClassI, II) 例21例中その大部分を占める17例は標本不適によるもので, 腫瘍細胞が十分に採取されていなかったことが原因であり, 細胞自身の異型度が低いために判定が不一致となった症例は4例であった.疑診 (Class III) 判定例26例についても同様の傾向があり, 標本不適が11例とやや多く, 細胞所見を過小評価していたものが9例, 軽度異型が6例であった.
以上の結果より, 乳腺穿刺吸引細胞診では, いかに細胞を確実に採取するかが最も重要であることが示唆され, 特に小腫瘤では超音波誘導下での穿刺が望まれる.さらに, 現在の細胞診の判定基準では, 細胞形態的に良・悪の鑑別が困難な症例が存在することから, 症例によっては生検をもって診断を確定することが必要と考えられる.

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