日本臨床細胞学会雑誌
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乳房細胞診の問題点
(1) 実地臨床と関連した新しい細胞診報告方式の提唱
垣花 昌彦沢井 繁男山下 俊樹浦崎 政浩野原 キクエ佐々木 陽一山田 喬村上 俊一
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1993 年 32 巻 6 号 p. 876-883

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抄録

乳房細胞診の診断結果め報告にPapanicolaouの分類を応用するのには, 好ましくない点が多い. そこで, 細胞診の結果が直接臨床上の指針となるような, 新しい報告方式の基準を考案した. すなわち,“CO: 細胞採取不良, 標本作成上の失敗による標本不良により判定不能. CI: 細胞は採取されているが上皮性成分がない. CII: 上皮性成分, 結合組織成分が採取されているが細胞異型がない. CIIb: 良性であるが, 採取細胞に軽度の異型があり, 要経過観察. CIIIa: 細胞異型は中等度, 悪性を完全には否定できないので外来で試験切除もしくは厳重な経過観察. CIIIb: 細胞異型は強く悪性を疑うが確実でないので, 入院して試験切除, 迅速組織検査を行う. CIV: 細胞異型は若干弱いが悪性細胞. CV: 細胞異型の強い悪性細胞.” である. さらに, できるかぎり推定病変を記載することにした.この報告基準にしたがって1988年から1992年まで成績を検討すると, CIV群, CV群は, 63 例中63例すべて悪性. CIIIb群では35例中18例が悪性. CIIIa群では65例中4例が悪性であった. この方法により, 過剰な手術を行う可能性が減少し, 適切な指針となることがわかった. また, 細胞採取の状況がわかるような報告を作ることによって再検査の要請や, 悪性細胞がみられない場合でも総合診断の一部としての細胞診の意味づけができるようになった.

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