日本臨床細胞学会雑誌
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子宮内膜漿液性腺癌の細胞所見
立岡 和弘上坊 敏子久嶋 則行大河原 聡林 玲子蔵本 博行
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1993 年 32 巻 6 号 p. 948-955

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抄録

子宮体癌のなかで漿液性腺癌はまれなものであるが, その予後は一般の体癌に比し不良であることが指摘されている. われわれは273例の体癌の中で3例の漿液性腺癌を経験したので, その細胞所見を報告する. 3症例の年齢は56歳, 53歳, 64歳であった. FIGO進行期は3症例ともIIIA期であった. 2例に腹水を認めたが, これらの症例も含めて全例腹腔細胞診陽性であった. また1例では卵巣への転移を認めた. 全例手術および化学療法を施行し, 最近の2例は生存中であるが, 1例は術後14ヵ月で再発死亡した.
3例のうち筋層浸潤を認めた2例の内膜細胞所見の背景は血液, 壊死物質で汚染され, 正常内膜細胞の出現はみられなかった. しかし, 筋層浸潤のなかった1例では背景はきれいで, わずかに正常内膜細胞の出現を認めた. 腫瘍細胞は大小種々の重積性著明な乳頭状集塊を形成して出現しており, 腺管構造は目立たなかった. 集塊周囲には孤立性の腫瘍細胞も少数認めた. 腫瘍細胞の核はクロマチンが増量し, 大小不同性が著明であり, 核縁は肥厚し, 大型の核小体を1-2個有していた. 細胞質は比較的少なく, 一部には空胞を有しているものもあった. N/C比の高いのが特徴的であった. Psammoma bodyはいずれの検体にもみられなかった. 腹腔細胞診にも同じ細胞が乳頭状の集塊を形成して出現していたが, 内膜細胞診より集塊は小さく細胞質内の空胞形成傾向が強かった.
画像解析システムを用いた核面積の検討を2症例について行った. 症例1および症例2の核面積は103.8±56.3μm2,119.0±44.5μm2と大型で, 核の大小不同が著明であった.
内膜細胞診における卵巣原発漿液性腺癌との鑑別の要点は,(1) 腫瘍壊死性背景,(2) 細胞集塊が大きいこと,(3) 正常内膜細胞がほとんどみられないこと, であった.

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