日本臨床細胞学会雑誌
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松果体細胞腫の1例
細胞病理学的特徴および細胞増殖能について
森木 利昭高橋 保植田 庄介和田 匡代栗坂 昌宏宮崎 恵利子清久 泰司原 弘
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1994 年 33 巻 1 号 p. 78-85

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抄録

松果体細胞腫は非常にまれな腫瘍である.われわれは最近その1例を経験し, 細胞・病理組織所見に加え細胞増殖能についても検討したので報告する.症例は40歳, 男性.平成4年9月頃より閉塞性水頭症出現.CT, MRIでは松果体部に径2.5cm大の腫瘍を認め, 12月腫瘍摘出術施行.捺印細胞診では多数の腫瘍細胞がシート状, 集籏性に認められた.細胞は小型で均一, 胞体はやや乏しく薄く細胞境界は比較的明瞭.核は類円形~ 卵円形でクロマチンは微細顆粒状.小型の核小体を認めるものもある.細胞集塊の中にロゼット様構造もみられた.組織学的には類円形核と弱好酸性胞体をもつ腫瘍細胞が充実性胞巣状に増殖しており, 一部ではpineocytomatous rosetteが認められた.免疫組織学的にはSynaptophysinが細胞質に顆粒状に陽性.一部の細胞質や細胞突起内でNeurofilament, GFAP, S-100蛋白が陽性.電顕的には細胞内小器官の乏しい未熟な細胞から小器官が比較的よく発達しannulate lamellaeの目立つ細胞もみられた.一部ではシナプス様構造も認められた.BrdU標識率は約3%, PCNA陽性細胞は約5%であり, 本例では細胞増殖能は通常の低悪性脳腫瘍ほど低くはないものと考えられた.

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