日本臨床細胞学会雑誌
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喀痰細胞診における脂肪染色
中原 保治中原 由紀子西園寺 正士木下 晴希三村 拓郎桂 栄孝
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1994 年 33 巻 3 号 p. 437-442

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抄録

喀疾細胞診における脂肪染色の意義について検討した.対象は本院で昭和59年より20ヵ月間に扱った喀疾細胞診3289検体 (1503症例) である.パパニコロー染色と同時に行ったオイル・レッド0染色で, 赤色鮮明に染まる均一な顆粒を持つ組織球性細胞の出現状態を4段階に分類, 特にこれら脂肪陽性細胞が多数みられるとき, または集合している場合を脂肪強陽性とした.その結果, 細胞診陽性検体あるいは肺癌患者の検体で高率に脂肪強陽性を認めた.すなわち細胞診陽性検体の71.1%に強陽性の脂肪を認めるが, 細胞診陰性検体のうちでは脂肪強陽性は10.7%にすぎない.また, 肺癌患者の74.0%はその喀疾に強度の脂肪出現をみたが, 非癌症例の脂肪強陽性は10ないし20%にとどまった.注目すべきは細胞診陰性でも脂肪が強度に出現している検体ではその40%強が肺癌患者の検体であった.肺癌患者での脂肪出現状態はその組織型, 分化度, 腫瘍の大きさ, 占拠部位などに関係がみられず, 手術標本の検討から脂肪は腫瘍部に由来すると考えられた.脂肪染色は喀疾細胞診のスクリーニングにおける補助手段として, あるいは肺癌患者発見の意味で有用と考えられた.

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