日本臨床細胞学会雑誌
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明細胞が主体に構成される肺大細胞癌の1例
沼田 ますみ小野田 登大貫 敬司山田 穣堤 寛長村 義之竹内 廣
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1994 年 33 巻 3 号 p. 500-503

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抄録

明細胞が主体に構成される肺大細胞癌の1例を報告する.症例は86歳の男性.増量する喀疾を主訴に近医を受診し, 胸部X線写真上左肺上葉にcoin lesionを指摘された.気管支鏡下の気管支擦過細胞診を行いclassVと診断され, 左肺上葉切除術を施行された.
気管支擦過細胞診所見は, 大小不同の著しい腫瘍細胞が, 比較的平面的に出現し, N/C比のばらつきも目立った.粗穎粒状のクロマチンを有し, 核小体の目立つ核と, ライト緑淡染性の淡明な細胞質を示した.切除肺には, 肉眼的に径3cmの黄白色境界明瞭な充実性腫瘍がみられた.病理組織所見では, 血管豊富な充実性腫瘍で, 明らかな扁平上皮癌および腺癌への分化は認めなかった.主体をなす細胞は, 細胞および核の大小不同が目立ち, グリコーゲンの豊富な明るい細胞質が特徴的であった.
核の大小不同が非常に目立つ点と併せて, 細胞所見は組織所見をきわめてよく反映しているものと思われる.本邦における肺癌取扱い規約では, 明細胞癌は独立した組織型の存在が確認し難いとの理由で分類からは除外されている.WHO分類では肺明細胞癌は, 大細胞癌の一亜型として分類されており, その構成成分が淡明ないし泡沫状の胞体を有する腫瘍細胞であり, 腺細胞ないし扁平上皮への分化が認められていないものとして定義されており, そこに示されている基準を本例は満たしていると考える.腎細胞癌の肺転移を始め, 良性明細胞腫が鑑別診断として問題となったが, いずれも臨床検査上, また免疫組織化学的検索にて否定された.

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