日本臨床細胞学会雑誌
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子宮内膜増殖症に数種の化生上皮を合併した1例
伏見 博彰中室 嘉郎西山 茂西原 和代藤中 浩樹虎頭 廉
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1994 年 33 巻 4 号 p. 664-668

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抄録

内膜擦過細胞診および組織診にて癌と誤診される可能性がある多種の化生上皮を伴った子宮内膜増殖症の1症例を経験したので, その細胞像および組織像を報告する. 症例は53歳, 主婦. 性器出血を主訴として来院し, 子宮内膜の擦過細胞診, 組織診検体が採取された. その後子宮摘出術がなされ, 内膜組織診, 捺印細胞診検体が採取された. これらの検体には, 子宮内膜増殖症の所見に加え, 大型細胞の出現が認められた. これらの大型細胞は,(1) 淡明で豊富な明るい細胞質と中心位の核を有するeosinophilic metaplasia,(2) それに加えて細胞表面に線毛を有するciliated cellmetaplasia,(3) 著明な粘液産生による偏在性の核を有するmucinous metaplasiaの3種類に大別された.
子宮内膜増殖症には種々の化生上皮が出現することが知られており, この症例の化生上皮は主として卵管上皮への分化をとっていると考えられた.
そして, これらの化生上皮は大型細胞からなることもあって, 癌と誤診される可能性がある. 化生上皮の種類, 形態を熟知し, 癌との鑑別を厳密に行うことが重要である.

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