心外膜に発生したきわめてまれな悪性リンパ腫を経験したので, その細胞診所見および組織学的所見を述べるとともに, 心臓原発悪性リンパ腫の診断における捺印細胞診の有用性, さらにその組織発生についても若干の文献的考察を加えて報告した.
症例は63歳, 男性. 労作時の呼吸困難を主訴に当科受診. 画像上, 腫瘍は心臓の壁外性に発育増殖しており, 周囲の大血管に浸潤していた. 転移性腫瘍が疑われ, 精査されたが原発巣は確認されなかった. 確定診断のため試験開胸され, そのとき術中凍結標本が提出された. 捺印細胞診では, 核径は10-30μmと多彩で, 粗顆粒状の核クロマチンと1ないし数個の核小体を有する腫瘍細胞が散在性に出現し, ときに深い切れ込み核を認めた. 組織学的には心外膜の間質に中等大から大型の異型リンパ球が混在しながら増殖し, 核の切れ込みや核分裂像を認めた. 悪性リンパ腫が強く疑われ, 後に免疫組織化学的検索によりLCA, L 26陽性が確認され, B細胞由来の悪性リンパ腫 (diffuse, mixed type) と診断した.