33 巻 (1994) 4 号 p. 732-738
後天性免疫不全症候群 (AIDS) 患者に発症した重症クリプトスポリジウム症の1例を報告した.
患者は24歳男性.血友病の治療に用いた血液製剤よりHIVに感染, カリニ肺炎を併発しAIDSを発症.その後, 難治性下痢を主訴に抗生剤投与を受けるも改善せず, 糞便検査にて小形アメーバ様の構造物を認め, 直腸生検にてクリプトスポリジウム症の診断を受けた.十二指腸液の細胞診・電顕的検索により, クリプトスポリジウムのオーシストやメロゾイトないしスポロゾイトと思われる細長い三日月状の構造物を多数認めた.喀疾からもオーシストが検出された.細胞診断にはギムザ染色のほか, Kinyoun抗酸染色が有用であった.
クリプトスポリジウム症は, ヒトではまれとされてきたが, 最近AIDS患者の増加に伴って慢性下痢症の原因の一つとして注目されてきている.細胞診検査においても遭遇する可能性があり, その形態に習熟が必要と思われた.クリプトスポリジウムは小型であり, 通常の染色法では見逃しやすいので, 抗酸染色やショ糖液遠心沈澱浮遊法などの本原虫検出のための方法を実施するなど, 十分な対応が必要と思われた.