日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺の細胞診と病理形態および画像診断の比較検討
杉島 節夫神代 正道
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1994 年 33 巻 6 号 p. 1001-1008

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抄録

乳腺の細胞診のべ2,136例を病理組織診と対比し細胞診の成績と, 画像診断上悪性所見を示さず細胞診のみ乳癌の術前診断を行い得た症例の病理形態学的特徴について検討をした.細胞診のクラス分類の内訳としてClass Iは1,158例 (54.2%), Class llは99例 (4.6%), Class IIIは49例 (2.3%), Class IVは32例 (1.5%), Class Vは170例 (8.0%), さらに検体不良例628例 (29.3%) であった.細胞診陰性 (Class I, II) と診断した症例のうち98例に病理組織診が行われ硬癌2例, 乳頭腺管癌3例, 小葉癌1例が含まれていた.細胞診陽性 (Class IV, V) の症例のうち169例に病理組織診が行われ線維腺腫3例, 乳管内乳頭腫3例, 嚢胞内乳頭腫1例, 良性問質組織1例が含まれていた.細胞診の正診率については細胞診陰性例では93.9%, 細胞診陽性例では95.3%であった.
細胞診でClass III以上と診断し悪性が疑われた251例のうち, 病理組織診が行われ術後の再発例を除き悪性と診断されたのは178例で, そのうち画像診断上悪性所見が認められなかったのは15症例 (8.4%) であった.画像診断上悪性所見のみられなかった15症例の病理組織診断は, 乳頭腺管癌6例, 粘液癌4例, 硬癌2例, 充実腺管癌1例, 嚢胞内乳頭癌1例, 非浸潤性乳管癌1例であり, 腫瘤の大きさとしては1.0cm以下が6例, 1.1~1.5cmが8例と1例は乳頭分泌物で腫瘤は認められず全症例とも1.5cm以下の腫瘤であった.さらに粘液癌では1.5cm以下の大きさの腫瘤ではすべて画像診断上は悪性所見に乏しく, 細胞診のみが乳癌の術前診断に有用であった.

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