1994 年 33 巻 6 号 p. 1054-1067
正常子宮内膜細胞, 子宮内膜腺癌細胞を用いそれらの超微形態学的特徴に関し, 細胞診-SEM-TEM 連続観察あるいは組織のTEM観察で検討した. SEM観察では, 増殖期で小型でほぼ均等分布のMicrovilli (MV) を有する細胞と中程度の長さのciliaを有する細胞, 分泌期で分布がやや不規則のMVを有する細胞と細長いciliaを有する細胞を認め, 一方腺癌細胞では正常細胞に比し明らかにMVの分布が不規則, 不均一となり, さらに分化度の低下に伴いMVの減少を認めた. 集団形態の観察では, G1で大きな細胞集塊の辺縁に細胞小集塊による巨大突出構造, また細胞集塊辺縁部に連続した小さな細胞質の芽状突出構造を認め, 細胞診にfeed backできる所見と考えられた. TEM観察では腺癌で核縁不整, 巨大mesh様核小体, 腫大したミトコンドリアを認め, また分化度の低下に伴いより顕著な核縁不整, N/C比の増大, ミトコンドリア・ライソゾーム・ゴルジ装置の減少を認めた. これらの中で核所見は細胞診所見の特徴を裏付けする所見といえる. 細胞接着装置の観察ではデスモゾーム数を測定し, G3はG1, G2に比べ有意な減少を認めた. このことより細胞接着装置は癌細胞分化度, さらに細胞診標本上の細胞出現様式とも相関性があることが示唆された.