老年者の子宮頸部異形成の細胞像を理解するため, 組織学的に裏付けのある異形成症例16例 (平均年齢75.4歳) を検討し, 若年者症例17例 (平均年齢38.1歳) と比較した.またhuman papillomavirus (HPV) の感染性変化についても検討した.老年者の異形成では労基底型核異常細胞の優i位なものが多く (11/16), その細胞像は多彩な形態を示し, われわれがかつて萎縮型細胞として分類したS型 (シート状), N型 (裸核), R型 (類円形), P型 (多角形) および集団形成型に対応する核異常細胞と考えられた.しかし労基底型核異常細胞優位な症例でも組織学的には軽度異形成とされることがあり (6/11) 注意を要する.組織学的には上皮の層形成は一般に薄く, 多く (9/16) は10層以下である.HPV感染性の変化は組織学的にも (9), 細胞学的にも (6) みられ, また2例では免疫組織学的検討およびin situ hybridization法によりHPV陽性所見を示した.