日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
甲状腺髄様癌の細胞診
河野 伊智郎谷口 恵美子覚道 健一宮内 昭隈 寛二
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 34 巻 1 号 p. 116-120

詳細
抄録

甲状腺腫瘍領域で近年, 穿刺吸引細胞診が広く用いられてきている. 従来, 甲状腺腫瘍の良性悪性の判定は困難であったが, 細胞診の導入により術前診断可能な症例が増え, その診断能も格段に向上してきた. 特に, 乳頭癌と髄様癌は, 細胞診でほぼ確診に近い診断を行うことが可能である. 本稿では, 甲状腺髄様癌に焦点を置き, その組織学的特色と, 細胞診における鑑別診断について記載した. 甲状腺髄様癌の特色は, 多稜型の粗結合性細胞が, 乳頭構造や濾胞構造をとらずに出現することであり, 壊死は認めず, ときにアミロイドを混じることがある. 紡錘形亜型の髄様癌では, 間葉系腫瘍様の紡錘形細胞が, 上皮配列をとらずに出現することがある. 腫瘍細胞は, 一般的に細胞質が広く, N/C比は小さく, 免疫組織学的に細胞質内のカルシトニンを証明すれば確定診断となる. 細胞の極性がないため, 核の位置はまちまちで, クロマチンの増量や核異型の程度も, 比較的乏しいものから, かなり強いものまで多彩である. しかし一般的には, 乳頭癌に比べると異型度は高度であり, クロマチンの粗大凝集を特色とする. また稀に核内封入体も認めることがあるので留意が必要となることがある.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top