未熟奇形腫は悪性胚細胞腫瘍の中では比較的まれな腫瘍である. また, 未熟奇形腫は他の悪性胚細胞腫瘍と合併することもあり, この場合は混合型胚細胞腫と分類される. 今回われわれは未熟奇形腫に絨毛癌および卵黄嚢腫瘍のコンポーネントを合わせもった混合型胚細胞性腫瘍を経験した.
症例は19歳, 未婚. 不正性器出血を主訴に近医受診. 当科の検査所見では, 腹部超音波, CTスキャンにて9×9cmの充実性腫瘍を右下腹部に認め, 軽度の腹水も認めた. 腫瘍マーカーはAFP, CA125, HCGが高値を示した. 細胞診所見は術前の腹水細胞診所見で細胞質が泡沫状で, 核小体, クロマチンの凝集の著明な細胞集団が散見されたので, 腺上皮由来細胞または未熟奇形腫由来の神経芽細胞を推定したが確定診断には至らなかった. 術後の組織所見は, 腫瘍の構成成分は非上皮成分の他に未分化な腺上皮, 神経組織, 平滑筋, 軟骨など多彩な成分が観察された. また免疫組織化学的にはAFP, HCG陽性細胞巣が散見され, 混合型胚細胞部腫瘍と診断するに至った.