1995 年 34 巻 3 号 p. 472-476
本邦では欧米に較べて乳癌の罹患率, 死亡率ともいまだ低率であり, 乳癌の女性生殖器への転移に関する報告も少ない. また, 報告例の多くは, すでに骨, 肝, 肺など多臓器に転移を伴った症例が多く, 女性生殖器への転移の形で初再発をきたした例はきわめてまれである. 今回われわれは, 根治術後3年を経た後, 女性生殖器へのびまん性転移の形で初再発をきたした早期乳癌の1例を経験した. 局在性腫瘤を伴わないびまん性転移の場合, 画像検査による診断は困難であり, その診断には腫瘍マーカーの測定とともに細胞診が有用であった. この症例は乳癌既往症例における初再発を知るうえで婦人科細胞診を含む積極的な検索が必要であることを示唆する興味深い症例と思われた.