胃原発の未分化大細胞型リンパ腫 (いわゆるKi-1リンパ腫) の1例を報告した. 患者は67歳の男性. 胃透視で異常を指摘され来院. 胃生検で悪性リンパ腫と診断され, 胃全摘時に胃粘膜およびリンパ節の捺印細胞診を行った. 腫瘍細胞は多数採取され, 孤立散在性に出現し, 細胞は大型で70μを超える大型多核, 一部花冠状核の腫瘍細胞が散見された. これらは一見Reed-Sternberg細胞様を呈し, 核分裂像もところどころにみられた. 以上の細胞所見から未分化大細胞型リンパ腫を疑った. 組織像では腫瘍細胞はリンパ濾胞周囲に集簇性あるいはびまん性に粘膜下層まで浸潤増殖し, 病巣内には線維化がみられ, 血管増生が豊富であった. 細胞診の所見をもとに免疫染色を行い, CD30, CD3およびUCHL-1が陽性の結果を得, 未分化大細胞型リンパ腫・T細胞型と診断した. 胃原発の未分化大細胞型リンパ腫は今までに10例の報告があり, 本例は11例目であるが, 確定診断にいたるきっかけが細胞診であったのは本例のみであった. 実地の診断面において, 未分化癌, 無色素性悪性黒色腫, ポジキン病との鑑別のうえで, 個々の細胞を詳細に観察し得る細胞診の併用は有用で, 免疫組織学的所見が参考になると思われた.