卵巣癌IV期の62歳の女性で癌性髄膜炎を併発した一症例を報告する. 腹水細胞診およびCTにて平成4年9月に卵巣癌と診断され, 11月に1回目の開腹術を施行するも腫瘍摘除不能で, 3クールの化学療法の後, 平成5年2月に2回目の開腹術を行い腫瘍をほぼ全摘した.
原発性卵巣腫瘍で組織型は漿液性嚢胞腺癌でリンパ節転移は認められなかった. その後2クールの化学療法を施行し4月に退院したが, 直後より脳神経症状が出現して再入院し頭部精査を行った. CT, MRIでは多発性脳梗塞を思わせる所見が認められたが, 髄液細胞診にて癌性髄膜炎が示唆されてまもなく全身状態悪化し, 平成5年5月永眠された.
化学療法の進歩による卵巣癌の生存期間の延長に伴いその中枢神経系への転移は増加している. その早期発見のためには画像診断だけでは不十分で髄液細胞診は有効な一助となり得る.