日本臨床細胞学会雑誌
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穿刺吸引細胞診を用いた乳癌および転移性肝癌に対する癌化学療法効果判定の試み
広岡 保明浜副 隆一塩田 摂成大谷 真二小林 誠人貝原 信明
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1995 年 34 巻 4 号 p. 766-772

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抄録

穿刺吸引細胞診を用いて乳癌および転移性肝癌の治療効果判定を試み, その有用性を検討した。
動注化学療法あるいは局所温熱療法併用下に動注化学療法が施行された乳癌3例, 転移性肝癌14例 (大腸癌: 10例, 胃癌: 4例) を対象として, 穿刺吸引細胞診の手技を用いて癌細胞を採取し, 治療前後における癌細胞の変性度 (degeneration index: DI) と腫瘍縮小率より判定した奏効度および患者生存期問とを対比検討した。
治療後の癌細胞には, 核の腫大・膨化, 巨細胞・多核巨細胞化, 核クロマチンの粗造化など, 核の変化が主に認められた。治療後のDIの変化と奏効度とはよく一致し, DIの変化が+5点以上の症例は全例partial response (PR) 群であった。大腸癌肝転移症例の治療後のDIの変化と治療後生存期間との間には有意 (P<0.001) な相関関係を認めた.
以上より, 乳癌および転移性肝癌における治療後のDIの変化は, 局所治療効果の判定ならびに予後予測因子として有用であることが示唆され, 穿刺吸引細胞診を用いた本法は治療効果判定法として有効であると考えられた.

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