日本臨床細胞学会雑誌
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膀胱癌の治療効果判定と追跡における尿細胞診の意義
元井 信蔵重 亮森 真理子藤原 喜枝村上 渉内藤 絹代水島 敏枝
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1995 年 34 巻 4 号 p. 773-779

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抄録

膀胱癌の各種治療後, その効果を判定し, 以後追跡し, 再発を予知することはきわめて重要である. 尿細胞診は, 患者への負担が少なく, 検体採取が容易で, 反復して検査できる利点があり, この目的に適している. われわれは, 各種の方法により治療された膀胱癌症例の治療効果判定と追跡における尿細胞診の意義について検討した.
治療効果の判定は子宮頸癌放射線治療効果の細胞診判定基準 (森脇ら) を準用し, 変性細胞の出現率と腫瘍細胞減少率を指標としてその程度により無効 (R0) から完全消失 (R4) までの5段階にわけた.
対象症例は移行上皮癌42例, 扁平上皮癌1例で, 計43例, 428検体 (平均10回/症例) の細胞診を検討した. その内訳は, 異型度別G1;3, G2;29, G3;9, GX;1例, 深達度別pTis (CIS);8, pTa;2, pT1;7, pT2;1, pT4;2, pTX;22例で, 治療はpTis (粘膜内癌, CIS) では全例が化学療法またはBG療法がなされ, pT1では経尿道腫瘍切除術 (transurethralresction, TUR-BT) 後化学療法 (膀胱内注入, 動注化学療法), 進行例では膀胱摘出と化学療法がなされていた.
膀胱癌の治療後継時的に尿細胞診を行い, 総合的な治療効果を判定し, 簡単に記号化して報告することは効果的な治療の施行にきわめて有効で, 特にCISでは細胞診が唯一の効果判定法であった。また, 追跡により治療継続の必要性, 再発の早期発見に有効で9例の再発を検出できた. 判定にあたっては癌細胞のviabilityの判定, 反応性異型細胞と癌細胞との鑑別に問題があった.

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