1995 年 34 巻 6 号 p. 1010-1015
痰と肺に含まれるアスベスト小体数を同時に算出し, 両者の関連性を検討した. 剖検12例から採取された気管内の痰は, 集細胞細胞診法と次亜塩素酸ナトリウムによる溶解法を用いて, また同一症例の肺組織は溶解法を用いてアスベスト小体を検出した. 痰中のアスベスト小体は細胞診法では12例中1例のみから検出されたが, 溶解法では8例から検出された. 肺組織からは全例でアスベスト小体が検出され, そのうち高度以上曝露 (151本/5g以上) は9例であった. 痰溶解法で検出された8症例の肺は高度以上のアスベスト曝露であった. 気管内痰と喀痰は成分的には同一と考えられるため, 通常提出される喀痰において溶解法を用いてアスベスト小体が検出されれば, 高度以上の曝露者である可能性が高く, 痰溶解法はアスベスト曝露のスクリーニング検査法として有用と考える.