日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
甲状腺疾患における癌遺伝子c-erbB-2, c-mycの免疫組織・細胞学的検討
丸田 淳子川本 均野口 志郎山下 裕人
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 34 巻 6 号 p. 1025-1029

詳細
抄録

甲状腺疾患と癌遺伝子c-erbB-2, c-mycの蛋白発現の関係を検討するため捺印標本を用いて免疫染色を施行した. 乳頭癌43例のうち28例 (65.1%) がErbB-2蛋白陽性であり, 26例 (60.5%) がc-myc蛋白陽性であった. 両蛋白とも濾胞腺腫, 腺腫様甲状腺腫に比して有意に高い陽性率を示した (P<0.001). また, ErbB-2, c-myc蛋白の染色結果がともに陽性または陰性の率は71.4%であった. ErbB-2蛋白陽性率では郭清したリンパ節の総数が増加するにつれて多くのリンパ節に転移が認められたが, 陰性例では郭清数と無関係であり, 転移のみられるリンパ節はわずかであった. さらに, 腫瘍が周囲組織へ浸潤性の増殖を示す症例 (5例) はすべて陽性例であった. c-myc蛋白に関しては転移や浸潤との関係はなかった. また, 同一組織を用いた免疫染色結果との一致率は両蛋白とも83.8%であり, 細胞診材料を用いた術前のリンパ節転移や浸潤傾向の予測がある程度可能であると考えられた.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top