日本臨床細胞学会雑誌
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濃縮コロイドが砂粒体や扁平上皮類似の形態を示した腺腫様甲状腺腫の1例
広川 満良三上 芳喜定平 吉都清水 道生真鍋 俊明有安 早苗
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1995 年 34 巻 6 号 p. 1109-1112

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抄録

腺腫様甲状腺腫にみられた濃縮コロイドが砂粒体様石灰化や扁平上皮類似の形態を示した1例を報告する. 患者は, 甲状腺左葉に約3cm大の腫瘤を指摘された60歳女性である. 穿刺吸引細胞診にて好酸性細胞型細胞が集合重積性に散見され, それらの細胞集塊内に多数の同心円状の石灰化小体が観察された. 術中の迅速診断時に作製した腫瘤割面捺印塗抹H-E電染色標本では, 多稜形をした濃縮コロイドの中心に類円形石灰化がみられ, あたかも扁平上皮細胞のようであった. 摘出した腫瘤の組織診断は腺腫様甲状腺腫で, 主として好酸性細胞型細胞よりなっていた. 小濾胞内には濃縮したコロイドが目立ち, 同心円状の石灰化を伴うものが目立った. これらの石灰化は形態学的に砂粒体に類似していたが, 診断学的な意味はなく, 乳頭癌の間質にできる真の砂粒体とは区別すべきものと考える. また, 扁平上皮細胞様構造物も中心に石灰化をきたした濃縮コロイドであったと考えられた.

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