日本臨床細胞学会雑誌
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Human cytomegalovirus (HCMV) 感染細胞における経時的形態変化の観察
竹内 隆子竹内 啓晃黄 莉莉篠原 久明山本 貴子藤井 華子森下 一美福春 道太郎平井 莞二
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1996 年 35 巻 1 号 p. 26-31

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抄録

Human cytomegalovirus (HCMV) は成人の90%以上に不顕性感染しているDNAウイルスであり, 免疫不全状態などの患者に重篤な合併症を惹起するため, 早期診断・治療が重要である. 現在は, PCR法が高感度であるが評価については, なお議論されている. 一方, 形態学的診断は特異性に優れており, 感度についてもさらなる向上が要求されている. そこで, 形態学的診断の向上を目的に培養細胞 (Human embryo lung fibroblast: HEL) にHCMVを感染させ経時的変化を, セルスメアー, セルブ'ロック (パラフィン切片) 作製後, PapanicolaouとH-E染色を実施し観察した. 結果は, 感染6時間後にはcluster形成が著明で, 核は軽度腫大し, その後, 細胞融合による多核化・合胞化が出現するがnuclearmoldingや核内スリガラス状構造は認めず, 細胞質は多陵形を呈していた. さらに細胞の大小不同性は著しく, 細胞質と核に小型空胞および封入体様物質を認め, 細胞は円形化してきた. 48時間後に著明封入体細胞が少数出現し, 細胞間結合の低下とともに集塊の分散傾向を認めた. 以上より, 細胞集塊形成, 重積による多核化・合胞化細胞, 小型halo, 細胞の円形化などは, HCMV感染を推定する重要な所見と考えられた.

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