日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺浸潤性小葉癌の細胞学的特徴
特に硬癌との鑑別について
土屋 眞一実原 正明石井 恵子町田 智恵渡辺 達男松山 郁生林 美鈴原 佳津志傳 麗北村 隆司
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1996 年 35 巻 5 号 p. 385-392

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抄録

小葉癌は乳房内多中心性発生という臨床病理学的特徴を有しており, 組織診はもとより細胞診での “小葉癌” 診断は乳房温存療法の適応と絡んで非常に重要である. 小葉癌, 特に浸潤性小葉癌 (ILC) の細胞学的特徴を知るためILC12例と, 鑑別の対象として狭義の硬癌 (SCP), 広義の硬癌 (SCB) を用いて組織, 細胞および電顕的に検討を行った. その結果, 第1点の鑑別点は線状配列するILC個々の細胞質は丸みを帯び, いわゆる数珠状の形態 (rosary-likeappearance) を示すが, SCPのそれは直線状となること. 第2点は核形, 核の配列でILCは円~楕円形を保っているが, SCPは周囲問質の圧排によって個々の核が押され, 縦並状となること. これはSCBのクサビ状, 塊状配列部も同様である. 第3点は明, 暗調細胞の存在でILCのほぼすべてが明調の細胞質で構成されているのに対し, SCPやSCBは明, 暗調両方の細胞質を持つ癌細胞が混在していること. 第4点は核クロマチン分布でILCは正染色質が, SCP, SCBでは異染色質がその主体を占めていることである. その他ILCには比較的大きな円形核小体が1個認められることや不明瞭な細胞境界を有している点も鑑別所見の一つとして考えられた.

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