日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
肝内小結節病変の針生検組織診と細胞診
特に高分化型肝細胞癌の細胞像を中心に
小林 省二川口 光彦山田 啓輔三木 洋大森 正樹
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 35 巻 5 号 p. 393-400

詳細
抄録

肝内小結節性病変の針生検時に得られた細胞診と組織診を対比して, 肝生検における細胞診の有用性を証明した. 対象とした69結節のうち良性病変は14結節で, 結節性脂肪変性, 肝硬変の再生結節, 腺腫様過形成などがみられ, それぞれの組織に対応した細胞像が認められた. 悪性腫瘍は55結節で, 高分化型肝細胞癌は43結節で細胞診では30結節 (約70%) に正診が得られた. 中分化肝細胞癌, 転移癌では全例に正診が得られた. また壊死や生検組織が微小であるために組織診断の不可能な場合に細胞診のみで悪性という診断をうることのできたのが5例あった.
腫瘍細胞に類似した異型細胞としてlarge cell dysplasiaがあるが, 大型の異型細胞で核の濃染性と核小体の腫大を特徴とするが, 核不整や核縁の肥厚は弱く, N/C比も高くないという点で異なる. 高分化型肝細胞癌の細胞像は (1) 細胞集塊では細胞核密度の増加,(2) 細胞は小型で, 均一な印象,(3) N/C比は増加するがanisokaryosisは弱い,(4) 核の偏在傾向がみられ, 多くは淡明な細胞質を持つ, などの特徴を示す. しかし腺腫様過形成などの境界病変との区別の難しい場合もある. 肝臓の細胞診の正診率の向上には十分な細胞数を得るとともに, 境界病変の細胞像の記載の充実がのぞまれる.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top