日本臨床細胞学会雑誌
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乳腺adenomyoepitheliomaの1例
宮嶋 葉子伊藤 仁梅村 しのぶ堤 寛長村 義之
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1996 年 35 巻 5 号 p. 466-471

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抄録

乳腺adenomyoepitheliomaの1例を経験したので報告する.症例は74歳, 女性.乳腺腫瘤を自覚し来院.臨床所見にて悪性腫瘍が疑われ, 穿刺吸引細胞診および腫瘍摘出生検が行われた.
穿刺吸引細胞診では, 腫瘍細胞は集塊状に採取され, 多くの場合, 間質を伴う上皮細胞集塊として出現していた.これらの間質は腫瘍細胞の小集塊を境界するように認められた.腫瘍細胞には, 異型に乏しい類円形から楕円形の核を有する小型の細胞とそれよりはやや大型でN/C比の低い多辺形細胞が混在していた.組織学的, 免疫組織学的および電子顕微鏡的検討により, 前者は腺管上皮細胞であり, 後者は筋上皮細胞と考えられた.
乳腺adenomyoepitheliomaの穿刺吸引細胞診所見として, 腺管上皮細胞, 筋上皮細胞の存在が重要であった.特に後者は, 線維腺腫などでみられる裸核状筋上皮細胞とは異なり, 大型, 多辺形, 核内封入体などの特徴が認められた.本腫瘍は腺腫, 乳頭腫あるいは乳腺症などの良性病変との鑑別が必要な, また, 癌とoverdiagnosisしないよう留意するべき腫瘍であると考えられた.

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