日本臨床細胞学会雑誌
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腹水中にみられた前立腺癌細胞
その形態的特徴と鑑別診断を中心に
植嶋 しのぶ植嶋 輝久山村 章次河村 秀樹工藤 浩史吉田 春彦広川 満良
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1996 年 35 巻 5 号 p. 483-487

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抄録

64歳, 男性の腹水中に前立腺癌細胞を認めたので, その細胞像と鑑別診断を中心に, 免疫染色, および電子顕微鏡所見を加えて報告する.
腹水中の前立腺癌細胞は小型円形で結合性の弱い小集塊状, あるいは散在性に出現し, 胞体には大小の空胞を有するものもみられた. 平均核径は8.3μm, 核形の不整が強くみられ, 1~3μmの大型核小体が目立った. 免疫染色は通常の湿固定の後に染色したものと, パパニコロウ染色標本をMountQuick細胞転写法で分割し染色したものとの両方で検索した.その結果, ProstateSpecificAntigen (PSA). CEA. EMA. Keratinがそれぞれ陽性を示し, vinentinは陰性であった. 腹水沈渣中の異型細胞の電顕所見では微絨毛の発達は悪く, 細胞質にはライソソームやintracytoplasmiclumen様の空胞がみられた. 本例では, 腹水中に腺癌の特徴を有する異型細胞が多数みられたものの, 細胞像のみから原発巣を推定することは困難で, 抗PSA抗体を用いた免疫染色が原発巣推定に有用であった.

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