日本臨床細胞学会雑誌
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悪性唾液腺筋上皮腫の1例
中村 雅哉須永 義市柏瀬 芳久泉福 明子山根 伸夫高橋 峰夫小島 勝城下 尚
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1996 年 35 巻 6 号 p. 562-566

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抄録

唾液腺のまれな腫瘍である悪性筋上皮腫の1例を経験したので, その術中捺印細胞像を中心に報告する.症例は59歳女性, 軟口蓋の腫瘤を主訴として近医歯科を受診し腫瘍が疑われたため, 当院を紹介され腫瘍摘出術を施行した.術中での捺印細胞診標本にPapanicolaou染色を行うと, 腫瘍細胞は孤立散在性ないし結合性の弱い小集塊を形成して出現して, 細胞の細胞質の辺縁は不明瞭で核の大小不同が目立ち, 巨核の細胞や核内封入体を有する細胞もみられ, 大きな核小体を持つのも多数認められたため, 未分化癌ないし肉腫を疑った。また同標本のGiemsa染色では形質細胞に類似した好酸性で多辺形の広い細胞質と偏在性の核を有する腫瘍細胞が多数みられ, 核内封入体も認められた。しかしPerinuclear haloは認められなかった.病理組織学的にはH-E染色標本で大小不同のみられる好酸性の広い細胞質, 偏在性の核を有する腫瘍細胞が柵状ないし蜂巣状に増殖していて多核の細胞も混在していた.被膜浸潤はみられなかったが, 間質への浸潤があること, 少数の核分裂像がみられること, 細胞異型が比較的目立つことから低悪性度の形質細胞様細胞型の悪性筋上皮腫と診断した.免疫組織化学的検索でも腫瘍細胞の大部分はS-100蛋白, Vimentinが陽性で一部の細胞は平滑筋Actin, Keratinが陽性で本症例の筋上皮由来を支持していた.本症例のような形質細胞様細胞型の悪性筋上皮腫を細胞診で推定し得るのにGiemsa染色はきわめて有用と考えられる.

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