日本臨床細胞学会雑誌
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膵の粘液性嚢胞腺癌の1例
原 仁須田 耕一小山 敏雄木村 正博石井 恵理井上 智美堀家 誠一高相 和彦
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1996 年 35 巻 6 号 p. 567-571

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抄録

膵の粘液性嚢胞腺癌を1例経験し, その細胞像を検討した. 症例は35歳女性, 主婦. 左季肋部痛, 左背部痛出現. 超音波検査にて膵尾部に中心低エコー領域を示す大きな腫瘤があった. エコー下吸引細胞診では出現パターンが多彩で, シート状, 柵状, 乳頭状配列があり, これらは相互に移行していた. すなわち, シート状配列は密で1~6層の円柱状細胞からなり, 表面に細網状の赤色物質がみられた. また小型で良性にみえる細胞からなるシート状集団もあった. 柵状配列は淡緑色の高円柱状細胞からなり, 核偏在や核の重畳化がみられた. 乳頭状配列は細胞境界が明瞭で, 核のくびれや陥入像が顕著であった. 以上の細胞像および画像所見より粘液性嚢胞腺癌の診断のもとに膵体尾部脾切除術施行. 摘出腫瘍は11×10×8cmで, 組織学的には粘液性嚢胞腺癌であった. 術後10年経過の現在まで再発はない. また本例のような粘液性嚢胞腺癌と膵管内乳頭腺癌や粘液産生が目立つ管状腺癌との鑑別についても考察した.

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