日本臨床細胞学会雑誌
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胸水穿刺吸引細胞診にて推定診断した非ホジキンリンパ腫・リンパ芽球型の1例
細根 勝前田 昭太郎片山 博徳礒部 宏昭吉田 知永長江 康向後 俊明浅野 伍朗
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1996 年 35 巻 6 号 p. 590-594

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抄録

胸水穿刺吸引細胞診材料のみを用いて非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型と最終診断し得た1例を経験したので報告する. 症例は14歳の男性, 乾性咳嗽, 顔面浮腫を主訴に来院し, 胸部X線写真にて縦隔腫瘤を指摘され入院した. 明らかな表在リンパ節腫脹や肝・脾腫は認めなかった. 胸水穿刺吸引細胞診ではN/C比の大きい, 核クロマチンの非常に繊細な芽球様細胞の浸潤を認めた. これらの細胞は大部分中型リンパ球程度の大きさであり, 核には切れ込みが認められた. 免疫染色の結果はCD 45ROが陽性で, CD20は陰性であった. 以上の細胞所見, 免疫染色, 胸水のセル・ブロック材料の電顕所見, および年齢, 腫瘤の存在部位などから総合的に本症を非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型 (T-cell, convoluted type) と最終診断した. このため, 縦隔腫瘤に対する新たな生検は施行せず, ただちに化学療法を開始, 完全寛解に入り, 以来現在まで寛解を維持している. 非ホジキンリンパ腫リンパ芽球型のうち, 病変が縦隔に限局し, 表在リンパ節の腫大をみない例では一般に診断は困難であるが, 胸水の貯留を認める場合は自験例のように細胞診の材料のみでも最終診断に至ることが可能であり, 有効な診断法と思われた.

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