日本臨床細胞学会雑誌
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Normal-sized ovary carcinoma syndromeの1例
佐藤 康美五十嵐 信一加藤 幸一奈良 幸一細部 貞廣田中 俊誠
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1996 年 35 巻 6 号 p. 613-616

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抄録

正常大卵巣癌症候群 (normal-sized ovary carcinoma syndrome) は腹腔内播種が著明であるが, 卵巣は正常大で, 卵巣表面が細顆粒状か全く正常であるものをいう. 今回, われわれは当症候群と考えられる症例を経験したので, その腹水細胞診を中心に報告する.
症例は55歳, 女性. 腹部膨満感を主訴に受診. 超音波検査で多量の腹水を認め, 腹水細胞診で腺癌細胞を認めた. 細胞像では細胞質内空胞 (PAS陽性) を持つ細胞が集塊状に出現し, 核縁は切れ込みが目立ち, 赤色の大きな核小体を有し, 腺癌細胞と考えられた. 組織像では乳頭状増殖を示す部分と充実性増殖を示す部分が混在していた. 免疫組織学的検討ではEMAが陽性で, Vimentin, CA-125が陰性であった. ピアルロニダーゼ消化コロイド鉄染色では, 腫瘍細胞のコロイド鉄染色の染色性の低下は認められなかった. 以上より, 本症例は組織学的に漿液性乳頭状腺癌と診断された.

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