日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
悪性膵内分泌腫瘍の一切除例
擦過塗抹細胞標本の免疫細胞学的検索と合せて
国村 利明荒川 昭子大池 信之宮坂 信雄上倉 恵子永井 智子福田 ミヨ子諸星 利男
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 36 巻 1 号 p. 49-55

詳細
抄録

悪性膵内分泌腫瘍の一切除例を経験した.症例は47歳, 男性.1年半前より左季肋部痛が出現し, 1ヵ月前の人間ドックにて膵体尾部腫瘍と多発性の肝腫瘍が発見され当院受診となった.血液検査上は有意な所見を認めなかったが, 腹部画像診断にて膵体尾部に最大径7cm程度のhypervascularな腫瘍と多発性の肝腫瘍が確認された.肝腫瘍部位からの生検にて転移性の膵内分泌腫瘍が疑われたため, 膵体尾部切除術が施行された.切除材料の割面の擦過塗抹細胞標本では, 豊富な胞体を有する大型の腫瘍細胞がシート状あるいはリボン状に配列し, 核は大小不同で偏在傾向を示し, クロマチンパターンは顆粒状で, 大型の核小体を1~2個有するものが多くみられた.細胞学的には膵内分泌腫瘍と判定されたが, 明らかな悪性所見は確認されなかった.免疫細胞学的に, 大部分の腫瘍細胞はchromograninA, NSEに陽性で, 一部の細胞はsomatostatinとpancreatic polypeptideに陽性を示し, CEAやCA19-9に陽性の腫瘍細胞も確認された.組織学的に, chromograninA染色陽性の腫瘍細胞の脈管侵襲や神経周囲浸潤が確認され, 本症例は悪性膵内分泌腫瘍と診断された.

著者関連情報
© 特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
前の記事 次の記事
feedback
Top