日本臨床細胞学会雑誌
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肝転移巣の穿刺吸引細胞診により推定しえた副腎皮質癌の1例
大田 桂子塚本 孝久伊藤 園江大田 喜孝伊藤 裕司中村 康寛今村 豊
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1997 年 36 巻 1 号 p. 56-61

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抄録

症例は60歳, 女性で肝機能異常, 高血圧, 低カリウム血症, 全身浮腫がみられ, 当院に紹介入院となった.入院時の腹部CT像で肝に多発する結節性病変と左腎上極部に手拳大の腫瘤を認めた.肝穿刺吸引細胞診を施行し, 次の所見を得た.(1) 壊死物質を背景とし, 疎な結合を示す多数の腫瘍細胞が出現.(2) 巨核, 多核を有する異型の強い大型細胞と, 類円形核の小型細胞集団とが混在.(3) 細胞のN/C比は高く, 細胞質はライトグリーン淡染性で周縁不明瞭であり, 裸核細胞も認めた.(4) 核クロマチン構築は小型細胞では細顆粒状~細網状であるが, 大型細胞では粗網状で明らかに不均等分布し, 1~数個の明瞭な核小体を認めた.内分泌機能検査では副腎皮質関連項目の著しい上昇があり, クッシング症候群を認めた.以上の細胞所見と臨床像より副腎皮質癌の肝転移を考えた.患者には化学療法が施行されたが効果なく, 入院より1ヵ月後に永眠となった.剖検時の肝腫瘍部捺印標本による免疫染色ではコルチゾールとビメンチンに陽工生であり, サイトケラチンは陰性であった.組織像では好酸性細胞質の腫瘍細胞が胞巣状, 索状を基本に充実性増生しており, 内分泌活性型副腎皮質癌と診断した.原発は左側副腎で転移巣は肝臓のみであった.

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