日本臨床細胞学会雑誌
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アルブミン添加緩衝食塩水を用いた穿刺吸引細胞診の処理
渡辺 芳明佐藤 由美泉田 佳緒里須貝 由美子宇佐見 公一西村 広栄桜井 友子本間 慶一根本 啓一
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1997 年 36 巻 4 号 p. 364-368

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抄録

穿刺吸引細胞診検体を生理的食塩水 (生食水) で洗源した標本では, しばしば細胞染色性の低下がみられる. われわれは, この現象は生食水処理中に細胞内の蛋白成分が溶出することが一因と考え, アルブミンを多く含む生食水やpH7.4リン酸緩衝食塩水 (緩衝液) を洗源液として使用することにより染色性低下を防ぐことが可能であるか否か検討した. 10症例を対象に, 生食水と緩衝液の他, 両者のそれぞれに0.3%, 1.0%, 3.0%濃度に牛アルブミンを添加した系列とサコマノ液について行った. 採取後各1, 3, 6時間後に作成した標本を直接塗抹標本の細胞像を基準として染色所見の隔たり程度を5項目についてスコア化して評価し, 集計した. 結果は生食水系列, 緩衝液系列ともにアルブミン濃度に相関して染色性が高くなる傾向が認められた. 項目別では核濃染性, クロマチン分布, 細胞質染色性は3%アルブミン緩衝液が良く, また核形状を良く保存していたのは, サコマノ液であった. 採取3時間以内に標本作成する場合は3%アルブミン緩衝液が良く, 6時間以上ではサコマノ液が, 良い結果が期待される. 今回の検討から洗源液に3%アルブミン添加緩衝食塩液を用いることにより, 細胞の染色性低下をある程度防止できることが示唆された.

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