日本臨床細胞学会雑誌
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甲状腺疾患における石灰沈着, 特に砂粒体の出現とその有用性
丸田 淳子野口 志郎山下 裕人
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1997 年 36 巻 6 号 p. 563-567

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抄録

甲状腺疾患における石灰沈着, 特に砂粒体の出現頻度およびその有用性を検討した. 乳頭癌495例, 濾胞癌60例, 髄様癌3例, 濾胞腺腫730例, 腺腫様甲状腺腫628例, 慢性甲状腺炎33例, 亜急性甲状腺炎4例において, 粗大な石灰沈着の頻度は, それぞれ40%, 36%, 33%, 13%, 18%, 15%, 0%であった. 砂粒体の頻度は, それぞれ42%, 5%, 0%, 2%, 4%, 15%, 0%であった. 乳頭癌の砂粒体は, 乳頭状構造部で数多く, 濾胞構造部では少なかった. 砂粒体の細胞診での出現は乳頭癌のみで, 頻度は21%であり, 乳頭状構造優位型は濾胞構造優位型に比して高頻度であった (x2-test P =0.001). 原発巣に砂粒体を認めた乳頭癌の92例 (45%) は周囲の正常甲状腺組織にも砂粒体を認めた. 原発巣に砂粒体のないものは正常甲状腺組織にもなかった. 砂粒体を認めた乳頭癌および濾胞癌では209例中114例 (55%) に腺内播種を認めた. 周囲正常組織に砂粒体がある92例では, 10ヵ所以上の腺内播種は43例 (47%) と高頻度であった. 所属リンパ節郭清を行った乳頭癌425例では, 砂粒体陽性例のリンパ節転移数は8.0±0.7個であり, 陰性例の4.3±0.4個のおよそ2倍であった (Wilcoxon-test P<0.0001). 所属リンパ節転移は, 年齢と相関し, 若年および高齢者の症例で多かった (二次回帰分析P<0.0001). 砂粒体は40歳以下 (x2-test P<0.0001), 71歳以上 (x2-test P=0.05) の症例で有意に多かった. 砂粒体は乳頭癌の指標であるばかりでなく, 腺内播種や所属リンパ節転移の指標にもなりうる可能性がある.

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