日本臨床細胞学会雑誌
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滑膜肉腫の細胞学的検討
元井 亨石田 剛堀内 啓岡 輝明瀬田 章佐々木 学元井 紀子山内 直子福島 純一坂本 穆彦
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1997 年 36 巻 6 号 p. 583-588

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抄録

病理組織学的に滑膜肉腫と診断された6例 (二相型滑膜肉腫 (BSS) 1例, 単相線維型滑膜肉腫 (MFSS) 4例, 単相上皮型滑膜肉腫 (MESS) 1例) につき捺印細胞診または穿刺吸引細胞診を施行し, 細胞学的所見および組織学的所見を比較検討した. MFSSではその細胞像はほぼ同様であった. すなわち, 結合性に乏しい卵円形で細胞質の乏しい腫瘍細胞が散在性に出現し, その核は円形から卵円形で均一であった. 核縁は薄く平滑で, 繊細なクロマチンを有し, 核小体は小型で明瞭であった. MFSSは線維肉腫や悪性神経鞘腫瘍など, 紡錘形細胞肉腫との鑑別が問題となることが多いが, その細胞学的な特徴から推定診断が可能であると考えられた. BSSでは組織学的には明らかな2相性パターンがびまん性に認められたにも拘わらず, 細胞学的には上皮様細胞の集塊の出現は少なかった. 上皮様腫瘍細胞はゆるい結合性を示し, やや豊かな円形または多角形の胞体を有しており, その核は紡錘形腫瘍細胞と類似していた. 立体的な集塊は観察されず, 核所見と結合性の点で通常の腺癌とは異なっていると考えられた. MESSは細胞学的, 組織学的に節状パターンを有し, 腺様嚢胞癌との鑑別が問題となったが, 核の性状はBSSやMFSSの腫瘍細胞の核に類似しており, 粘液様物質がPapanicolaou染色, May-Grünwald Giemsa染色にて染色されない点で腺様嚢胞癌と異なっていた.

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