1998 年 37 巻 1 号 p. 21-26
今回, われわれは男性乳癌7例を経験し, Yクロマチンの有無細胞学的および免疫学的特性, さらに乳癌の予後推定や術後の内分泌治療の指標として用いられているホルモンレセプターについて検討した.Yクロマチンの存在については女性化乳房症と診断された15例, ホルモンレセプターの測定が可能であった31例について比較検討を試みた.
RIA法におけるERおよびPGRの陽性率では男性乳癌が女性乳癌に比べ高い傾向を示した. 一方, パラフィン切片によるERおよびPGRの免疫染色では男性乳癌と女性乳癌における陽性細胞の出現様相に差はなかった.女性化乳房症ではER, PGRともに13/15症例がそれぞれ陽性を示した.
男性乳癌のYクロマチンは7症例すべてにみられ, その数も1~3, 4個認められた. 一方, 女性化乳房症ではYクロマチンは15例すべてにみられたが, その数は1~2個であった.以上の結果より男性乳癌例と女性化乳房症例との間において明らかにYクロマチンの数に有意差 (P<.0001) が認められた.男性乳癌例が女性化乳房症例に比しYクロマチンの数が多いのは癌細胞における細胞周期の回転が活発に活動しているものと推察される.