組織学的に木村病と診断された4例を経験したので, その細胞学的特徴について検討した.症例はいずれも頸部腫瘤を主訴に来院し, 悪性リンパ腫が疑われ穿刺吸引細胞診が施行された.4例中3例は, 多数のリンパ球の出現とともに多くの好酸球が認められ, 木村病を疑うことができた.しかし, 1例は, 多数のリンパ球が出現するのみで, 好酸球はほとんど認められず, 反応性リンパ節炎を疑ったが, 再鏡検により, 木村病の特徴の一つであるWarthin-Finkeldey typeの多核巨細胞 (以下, W-F巨細胞) が認められた.
以上より, 主に頸部腫瘤の穿刺吸引細胞診でリンパ球とともに多数の好酸球を認めた場合木村病を疑うことが可能であり, 術前診断としての穿刺吸引細胞診はきわめて有用な補助診断法と考えられる.しかし, 組織学的にも好酸球の浸潤の程度は部位により種々であるため, 頸部腫瘤をみた場合には木村病の存在を念頭に置き, 穿刺吸引は部位を変えて数回行うことが重要と考えられる.また, リンパ濾胞の胚中心に存在するW-F巨細胞も木村病の特徴とされており, 好酸球の出現とともに本巨細胞の出現にも注意を払う必要があると思われた.