日本臨床細胞学会雑誌
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腋窩アポクリン腺癌の1例
その転移リンパ節内容液の細胞像
岡 ハル子小原 光祥岩井 幸子濱田 哲夫久岡 正典橋本 洋岩田 康
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1998 年 37 巻 1 号 p. 86-90

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抄録

アポクリン腺癌はまれな皮膚付属器腫瘍の1つであり, 細胞学的にもその報告はきわめて少ない.今回われわれは, 腋窩原発のアポクリン腺癌と診断され, 両肺と縦隔リンパ節に転移した1例を経験したので報告する.症例は63歳男性.14年前, 右腋窩腫瘍摘出.組織診断はアポクリン腺癌であった.5年後, 両肺に転移.以来, 3度にわたり腫瘍摘出術が施行された.縦隔リンパ節転移の内容液細胞診では, 壊死性背景に軽度重積性を示す乳頭状の大型細胞集塊を多数認めた.細胞質は明るく豊富で顆粒状を呈していた.核は類円形~楕円形, 一部の核に搬壁を認め, 明瞭な核小体を1個有していた.細胞集塊内には粘液塊が多数みられ, 特に乳頭状突出部で顕著であった.組織学的には, 好酸性の細胞質を有する腫瘍細胞が主として乳頭状に増殖し, 部分的に管状あるいは充実性に増殖する部分が認められ, 多様な像を呈していた.乳頭状増殖を示す腫瘍細胞には断頭分泌像を認めた.細胞質内や管腔内にジアスターゼ抵抗性PAS反応陽性物質を認めた.免疫組織化学所見では, GCDFP-15, EMA, S-100蛋白陽性, CEA陰性であった.本腫瘍は長年にわたる前駆病巣の存在が指摘されており, この時期に早期発見, 治療することが望ましいと思われた.

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