日本臨床細胞学会雑誌
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肝穿刺吸引細胞診で診断し得た微小直腸カルチノイド腫瘍の多発肝転移
望月 衛江尻 晴博高橋 勝美小島 英明細川 洋平
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1998 年 37 巻 2 号 p. 218-221

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抄録

原発腫瘍の大きさが10rnm以下の微小直腸カルチノイド腫瘍から, 多発肝転移をきたしたまれなる1症例を経験した. 転移巣の穿刺吸引細胞像を報告する. 症例は73歳, 男性.転移性肝腫瘍の精査目的で入院. エコーガイド下肝生検・穿刺吸引細胞診で転移性カルチノイド腫瘍と診断. 患者は今回入院の5年半前に早期胃癌で胃部分切除術を施行されている. その2年半後に残胃早期癌で残胃全摘術と, 直腸カルチノイド腫瘍の経肛門的腫瘍切除術を施行されている. 切除標本上, カルチノイド腫瘍の大きさは約3mm. 穿刺吸引標本中には, 小型類円形核を有する腫瘍細胞が重積性を示す細胞集塊を形成するものと, 孤立散在性に出現するものが混在していた. 腫瘍細胞の核クロマチンは明るく繊細で, 小型明瞭な核小体を持っていた. N/C比は高く, 軽度の核形不整を認めた.壊死巣・核分裂像はなかった. 穿刺吸引細胞診は核所見の詳細な観察が可能である点で, カルチノイド腫瘍の診断に特に有用であると考えた.

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