日本臨床細胞学会雑誌
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膀胱に転移した肺原発小細胞癌の1例
佐々木 真紀子小林 省二山田 啓輔石川 雅士串田 吉生平川 栄一郎赤枝 輝明
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1998 年 37 巻 2 号 p. 226-229

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抄録

膀胱粘膜に遠隔転移をきたし, 尿細胞診で多数の癌細胞の出現を認めた肺原発小細胞癌のまれな症例を経験したので報告する. 症例は87歳の女性で無症候性肉眼的血尿を主訴に来院した. 尿沈渣細胞診では好中球と同大かやや大型の結合性の弱い小型の腫瘍細胞が個在性または小集塊をなして認められ細胞相互封入像もみられた. 核クロマチンは微細顆粒状で核縁がやや厚く小型の核小体を一個有すものや裸核状のものも散見された. 膀胱鏡下腫瘍摘出術が施行され, 三角部から左側壁にかけての径約4cm, 尿道口右側の径約1cmの非乳頭状隆起性病変から粘膜固有層までの浸潤を示す癌組織が採取された. 免疫組織学的にNSE, クロモグラニンに対して陽性反応がみられ膀胱原発の神経内分泌癌と診断された. このとき胸部X線で左肺門部に小結節状陰影がみられており, 臨床的には膀胱原発癌の肺門リンパ節転移と考えられていた. しかし確定診断より3ヵ月後に呼吸不全により死亡. 病理解剖の結果左肺門部から胸壁, 心嚢に直接浸潤する径6cmの腫瘤 (組織: 小細胞癌), 多臓器にわたる遠隔転移が認められたため, 膀胱の病巣もその部分症状であったと最終診断された.
膀胱原発の神経内分泌癌は非常にまれであり, また細胞学的に肺原発の小細胞癌との鑑別は困難とされているが, 予後のきわめて不良な腫瘍であり, 積極的な原発巣の検索が望まれる症例であった.

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