日本臨床細胞学会雑誌
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捺印細胞診が有用であった胞巣状軟部肉腫の1例
松本 一仁池崎 福治柿崎 寛吉岡 治彦八木橋 法登八木橋 操六
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1998 年 37 巻 2 号 p. 230-235

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抄録

胞巣状軟部肉腫は若年成人の下肢, 上肢, 頭頸部に好発するまれな悪性軟部腫瘍である. 今回われわれは左大腿部に発生し, 捺印細胞診が診断に有用であった本症の1例を経験したので報告する. 症例は12歳男子. 左大腿外側の腫瘤を主訴に当院を受診. 画像所見より悪性腫瘍を疑われ試験切除術が施行された. 左大腿外側広筋内に3×4cm大の紡錘形腫瘤が認められた. 捺印細胞像では大型類円形~多角形の腫瘍細胞が散在性, 一部集簇性に出現.腫瘍細胞は胞体が広くライトグリーン好性で微細顆粒状を呈し, 核は類円形で偏在, 1個の顕著な核小体を有していた.裸核細胞も多く, 数珠玉状の配列がしぼしば観察された. 胞体にはGiemsa染色にて赤紫色を呈する針状~桿状結晶や顆粒がしばしば観察され, これらはPAS陽性, diastase抵抗性であった. 以上の細胞所見より胞巣状軟部肉腫と診断, 組織診にて確定した. 免疫組織化学的には腫瘍細胞はmyoglobin, α-smooth muscleactinが陽性であり, 筋原説が支持された. 本腫瘍の細胞学的診断には特徴的な顆粒や針状結晶の証明が重要であるが, Papanicolaou染色のみでは識別が困難であり, PAS染色とともにGiemsa染色の併用がきわめて有用と考えられた.

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