37 巻 (1998) 4 号 p. 383-388
乳房温存療法後の局所再発の高危険群 (comedo type) を推測するために, 乳癌細胞におけるc-erbB-2遺伝子蛋白 (ErbB-2蛋白) 発現を免疫細胞学的に検索した. 乳癌67例の腫瘤穿刺吸引および腫瘍捺印の細胞診材料でErbB-2蛋白の検索を行った. 陽性例17例 (25%) のうち10例 (59%) は乳管内にcomedo typeの病巣を有していた. 一方, ErbB-2蛋白陰性例50例のうち47例 (94%) がnon-comedo typeの乳癌であった. したがって, 細胞診材料のErbB-2蛋白の染色性と, comedo typeの乳管内病巣との関係が示唆される. ErbB-2蛋白陽性例の癌細胞は, 豊富な細胞質をもち, 大小不同がみられる大型核で, 核小体著明な異型の強い癌細胞が多く, 壊死物質は半数の症例に認められた. ErbB-2蛋白陰性例では, N/C比は大きいが核は比較的小さい異型の乏しい癌細胞が多かった. しかし, ErbB-2蛋白陽性のcomedotypeの症例の中には, 核の大小不同や核形不整が軽度の癌細胞や壊死物質を認めない症例もみられた. 細胞所見のみからcomedo typeの乳癌を推定することは困難であり, 細胞診材料でのErbB-2蛋白の検索は, 乳管内病巣の推定に役立つものと考えられた.