1998 年 37 巻 4 号 p. 431-434
子宮筋腫で子宮および附属器摘出14年後に発生した原発性膣腺癌を報告した.
症例は58歳, 女性. 経膣超音波検査で膣断端部に2.5×2.9cmの腫瘍があり, 摘出術を施行した. 手術時, 左・内腸骨リンパ節に転移していた. その後, 肺・脳へ転移をきたし, 術後2年8ヵ月で死亡した. 術前の腫瘍部擦過細胞診では, 腫瘍細胞は孤立性, シート状または重積性を示して出現し, 背景は壊死性で好中球が浸潤していた. 腫瘍細胞の胞体は比較的大型で, ライトグリーンに好染し, 淡明であった. 核は辺縁不整で大小不同が強く, 偏在傾向を示し, 明瞭な円形の小体を有していた.
腫瘍は乳頭状やcribriform patternを示す類内膜腺癌が大部分で, 一部に明細胞腺癌が混在していた. 深部にGartner管由来と思われる嚢胞があり, 周囲に癌細胞が浸潤していたが, 嚢胞との連続性はなかった. 組織発生としてはGartner管由来を疑うが確定し得なかった.